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SikabaneWorksが関係するコンテンツ(主に*band系ローグライク)の開発近況・補足から全く個人的な雑記まで。

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2011/05/27

[*band][小説草稿]D'angbandバックストーリー(プロローグ2)

週2ペースほどでこの分量ならD'ang制作の片手間でできそうだ。

プロローグ・2

 我々に背を向けつつ手招きする彼に、私達は何歩かの間を置いてついていった。エルフの貴人は我々よりも数段高い上背と長い足を持っていたが、疲労の嵩んだ我々が駆け足をせずに済むように気遣ってか、ゆっくりと歩んでくれた。
 怪訝な彼を警戒せずにはいられなかったが、体はどこかで休息がすぐさま得られることへの安直な期待を抱き、歓喜の悲鳴を上げているようだった。
 天幕の横に置かれたかがり火か何かだろうと思われる冷たい平野の一点は、近づくにつれ全く面妖な代物であることに、我々は気づかされた。
 それは我々の知見の限りで強いて言うならば、東夷の中でも馬車族と呼ばれている一党が移動や簡単な宿泊に使う、布製の屋根をつけた馬車に似た形をしていた。
 だが、沈みかかった赤い太陽の光を浴びて光沢を見せるそれは、実際には布ではなく、ミスリルにも似た白銀で出来ていたのだ。形状も馬車族が扱うものとは大きく異なり、直方体に近いながらも極めて緻密で複雑な形をしていた。しかも馬車より数段に大きい。我々の故郷の基準として、民家一つ丸ごとの容積はあっただろうか。
 確かに馬車かそれに近い何かではあるのだろう。地面には黒色の分厚い、六つの大きな車輪がついている。だが、馬車であったら本来先頭にあるはずの、馬を繋ぎ止める部位はなく、御者が座ると思しき部位は、幌もどきと同様に金属製の何かに覆われていた。遠目に見えた冷たい光は、この先頭の幌から輝くものであったのだ。
 それにしても馬はどこにいるのだろうか?こんな重厚そうなものを動かそうというのなら、馬車族が使う、あの小柄ながも、独特の太い足と膂力をもった馬をもってしても、何十頭と必要に見えた。だが、開けた平野を見回してたころで、馬を放牧している様子も皆無だった。
 金髪の貴人は、いぶかしむ我々の表情を見て、上品ながらも悪戯者くさい笑みを浮かべて言った。

「これは馬車族のそれではありませんよ。移動自在の天幕という観点では同じものですが、『キャンピングカー』と言うもの。この度、長年の確執から和解を果たした古き友人が、私に進呈してくれたものなのです」

 私の内心の個人的見解を見透かしたような、金髪の貴人の説明に注意が向く直前、突如、奇妙な断続音と共に『キャンピングカー』と読んだ馬車もどきの先頭の光が若干に増した。我々伝道師の一行の中でも、臆病がちなハーフホビットのベルトーは腰を抜かし、間抜けな絶叫と共に尻餅をついた。
 断続音はドッドッドッドッと、獣の呻きともつかない音を上げ、このキャンピングカーとやらが異形の化け物であるかのように思わせた。しかし、微動だにせず生き物らしくも思えない息遣いであるところを見ると、やはり違ったようだ。

「こんな面白くて便利な代物を頂いたからには、早速使うべきと思いまして。その友人と和解に貢献してくれた方々を連れ、こうして〈混沌の地平〉のぶらり旅に回っています」

 エルフの貴人は、懐から奇妙な割符のようなものを取り出し、キャンピングカーの奇妙な紋様部分に目を見開きながら顔を近づけた後、その横の隙間に割符を通した。すると、その横にあった扉ほどの大きさの継ぎ目が左に音もなくずれて動き、キャンピングカーの内部が露になった。
 中は暖色系の色合いに眩く、形状は奇妙ながらも、明らかに住居の調度品と思われるものが幾つも散見された。天井に輝く照明には、極めて緻密な透明の細工が被せてあって、これが伝承に聞く玻璃瓶かと思わせるほどに輝かしかった。
 きょとんとした我々の様子を見て、エルフの貴人はじわじわと満悦を嗜んでいたようだ。
 ふと私は、キャンピングカーの下部に取り付けられた金属板に気づいた。
 上部とも車輪とも異なる、黒鉄と思しき材質で出来た板には、暗がりの中でも非常に見やすく、くっきりとした文字が打刻されていた。しかし、文字は我々には全く未知のもので、読み取りようがなかった。

『──────Linquileaner Industries Limited …』