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SikabaneWorksが関係するコンテンツ(主に*band系ローグライク)の開発近況・補足から全く個人的な雑記まで。

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2011/05/20

[*band][ファンタジー][小説]D'angbandバックストーリー1

D'angに影響するようなしないような二次設定。まあ、元よりここでのファンタジー論や言及ぶりが言及ぶりな訳で、純粋なトールキンファンにはあれこれ問題視されそうな話であることは了承の上、見ていただければ幸い。

“ヌメノール”の吟じ手・アデュナディル、ヴァララウカールを記す。

 創世の歌、アイヌリンダレの頃から全ての対立は始まっていた。
 歌い手となった最初の種族アイヌアの内、後の冥王メルコールの調べに惹かれた者達の
ほとんどは、後の長き神代の乱の中で叛乱の側に加わった。彼らはメルコールの生み出し
た独自の生命の原型にして最初の武器ウドゥンの焔を身にまとった。このことでメルコー
ルへの友誼や臣従を示し、力の悪鬼ヴァララウカールとして、至福の地アマンの神々や創
造主イルーヴァタールの被造物達と対峙したのである。
 彼らが乱に身を投じた動機は千差万別であり、その根本は彼らがアイヌアの後、本来な
らばマイアとして成すはずであったろう権能に基づいていた。その本質自体は、創世が成
されるより昔、イルーヴァタールが彼らを最初に生み出した頃から一貫しており、何者に
も歪められてはいない。
 ただ、メルコールの調べが示唆し、後にはイルーヴァタール自身が図らずも暴露した通
り、ヴァララウカールの願う彩りの多くは、イルーヴァタールの意図した次なる世界に一
片も反映されない事が定められていた。虚空より基づく陰陽と表裏の理について、陽と表
のみを集め満たした世界こそが彼らの創造主の究極の目標であった。例えわずかにも陰と
裏を孕む彼らの存在は、その遠大な計画の果て、永遠に楽土から追い立てられる絶対の運
命にあったのだ。
 ヴァララウカールは互いに競い争うこと旺盛であり、後代に至るまで深刻な対立を繰り
返していた。だが、この創造主がもたらした拭い難い絶望の一点においてだけは、常に憤
怒と共に強固な団結のありようを見せた。この団結を調律し、一個の力として、神代のい
くつかの勝利へと昇華せしめたこと、それこそが彼らの盟主である“力もて立つ者”メル
コール、あるいは副官である“物贈る君”アンナタールの手腕のほどである。
 また、メルコールの調べがもたらした影響は、明確な叛乱者だけではなかった。イルー
ヴァタールの運命に不平を抱きながらも、積極的な反発こそ見せなかったクルモなどのア
マンの民、あるいはイルーヴァタールからの優遇故、忠実に仕えること疑いようのない諸
力ヴァラール達にすらも彼の詩情の影響は、無意識の内、否応なく影を落としたのである。
 本来はイルーヴァタールの最初の被造物クウェンディ(エルフ)、次のエダイン(人間)
によって占められるはずであった世界の中に、鍛冶の司アウレが彼の民カザード(ドワー
フ)を加えたこと。さらに彼の民が自らの権能を脅かすと案じた彼の妻、大地のヤヴァン
ナがさらにエントを加えたことが、最も大きな例である。
 イルーヴァタールとヴァラールを有形無形に崇める民達の間では、この逸話に酷似した
ウトゥムノの民、ウルクやオログの神話を唾棄し、ドワーフとエントについては逆に彼等
の主の寛大さを称えるべき美談と見なしている。しかし実際の神代において、両者の話に
どれほどの差異があり、後者においては神々がどのような思惑で示談を収めたのか、それ
を真につまびらかにする伝承は確認できない。
 このような事情下で、ヴァララウカール達は己等の大義や欲望の成就を、メルコールへ
助力と共に託した。しかし先に語った通り、彼等がメルコールと交わした盟約はそれぞれ
に異なっている。全てを語り尽くすにはきりがなく、また謎のまま伝承の途絶えたと思わ
れる真実も多い。
 ただ言えることは、それらの盟約はメルコールが怒りの戦いの後に姿を消し、アンナタ
ールがその位を継ぐまで、万に及ぶ年月に渡りほぼ全てが強固な紐帯であり続けたことだ。
 西の伝承には、彼等の関係を「嘘偽りと当てにならぬ贈り物」のみで成り立ったものと
書き捨てたものが多い。一方、東の各地にはヴァララウカールを祖神とするウルクやオロ
グの間で、神話として語られている。その話の限りにおいて、ヴァララウカール達に軽薄
な約束事に騙されるような愚昧さはなかった。
 イルーヴァタールの定めたところでメルコールの妹とされ、やがて第一の妻となった女
マイア・ウルバンディは、後に姿を消した夫への盲従故に、東方の神々の戦いの中で最も
巨大な災禍をもたらした。だが、そのような女ですら、当初はヴァラールの戦士トゥルカ
スに仕え、ウトゥムノを築き上げたばかりの頃の兄と、熾烈な立ち回りを交わした逸話を
残している。
 そんな彼等がやがてメルコールの軍門に加わった物語の中には、何よりまず彼等自身の
意思がある。メルコールはそれを汲み取り、新たな道へ導いたに過ぎない。そして戦いの
果てに報酬を得たヴァララウカールとその末裔達は、今日もまた東方の各地で幾つもの帝
国を築き上げ、繁栄を謳歌し続けている。