ウルバンディこそは、冥王メルコールの正妃、そしてその間に竜、古オログ、古ウルクの始祖たち、そして第二世代の神としてゴスモグを産み落とした「黒き地母」である。夫からはモルナリルとも呼ばれて愛情を受けた。
対立するヴァリノールの神族は、ウトゥムノの神統を神として認めず貶め、記録抹消に執拗なことしきりであるが、それでも彼女の名は数少なくも、その記録に残っている。
そんな彼女も、元はと言えば、アルダ上古の黎明にはヴァリノールの神統に与する身であった。
直接には鍛冶の司アウレに仕え、比較的父イルーヴァタールへの忠誠は篤く、それ故に長兄メルコールと干戈を交えたこともあった。そして、これは全くヴァリノールにとって醜聞極まりないことであるが、かの強者トゥルカスの情婦として、最初の子を身籠っていた過去を持っている。
当然のように彼の子を産む事を考えていた彼女であったが、それは父イルーヴァタールの神命と、トゥルカスの日和見によって否定された。彼女は胎に宿した命をヴァリノールで成すことを許されることなく呪われ、トゥルカスは「運命」通りにネスサと婚姻することとなり、彼女はヴァリノールの一切を憎みながら苦痛と嘆きと共にメルコールに帰順した。
そこでメルコールと交わり、生命の攻究者メリンライトの助産を受けることで、彼女はようやく母となる事を許されたのである。
以来、彼女はウトゥムノの神統に加わり、分けてもヴァリノールの一切を凌辱し殺し尽くさんとする鬼女として、ウルウェンに並ぶ殺戮を、上古時代に繰り広げた。
上古最後の戦いにおいては、トゥルカスに対し報復も成し遂げ、その男根を喰らい尽くしている。
しかし「世界の楔」となるべく、〈遍在化〉を果たした愛しきメルコールと永久の別れを強いられたこと、そしてトゥルカスの膨大過ぎる力そのものを喰らって略奪したことが祟ったのか。
彼女の力は膨れ上がる一方、メルコール無き後のアルダを、黒き地母の名の下に一切を支配せんと目論み暴挙を重ねた。結果として、最終的にそれらはメルドールの神王アンナタールと、実子ゴスモグ、乳母子ルンゴルシンの報復を受け、彼女は滅び去った。少なくともアルダからは消滅したことには違いない。
しかし、滅された神は、その執着次第によっては、それでもなお多元宇宙の果て〈忘却界〉から蘇ることがある。取り分けて運命の予見に長けたアンナタールはその復活を予感し、今も何度でも彼女を滅するべく監視を続けているという。

