フナヒヤンダは、副女伯にしてアッキ=ニンジャたるウルウェンの長子にして正式なる夫その人である。言わずもがなの神話的1×2インブリードに他ならない。
ヴィーヤウトゥムノの創始者たる女神二名は、互いが男女として直接子を成すことができないことを最初に憂慮し、外に夫を求めて外戚に口出しされる懸念を避けた。故に先にそれぞれが適当な子種で男児を生み、さらにそれぞれと交わることで両女神の総血量七十五パーセントを維持することを狙ったのである。
この冒涜的交わりにより今日ヴィーヤウトゥムノの四大デーモン・クランは形成されている。
フナヒヤンダとウルウェンの間にはサムライ=デーモン・クラン、フナヒヤンダとロムンクァリィの間にはカミカゼ=デーモン・クランの始祖となる孫世代らがそれぞれ十数柱ずつ産み落とされた。
フナヒヤンダの父親は、元々〈混沌の宮廷〉の強大な貴族の末裔と思われるもその席次に数えられることのない、無名の落胤の一人であったと言われる。
されどその潜在能力自体は、有力貴族に勝るとも劣らぬものを秘めており、当初ウルウェンは一目惚れと言ってよい程の好意を抱き、また未熟な彼に密かに近づき教導者となって彼を育てた。
のみならず彼が理想的に成長した暁には、当初の予定を覆して彼こそをヴィーヤウトゥムノの君主に据えることも考えてはどうかと、姉ロムンクァリィに頭を下げて懇願し、それを半ば認められる程に熱を入れていたという。
しかし、この無名の落胤は余りに驕慢に過ぎた。その驕慢たるや性質の悪いなろう異世界転生の破綻したシナリオに出て来る、全く出来の悪いクズそのものな主人公のごときであったという。
やがて彼女の熱い恋慕は大きな失望に変わり、彼を夫でなくただの種として扱い使い捨てることにした。その際彼の持っていた資質の大半を慰謝料として略奪すると、その腹に宿してフナヒヤンダを生んだのである。
フナヒヤンダは彼の母ほど情熱的でもなければ、彼の血統上の父ほど愚かではない。ただ、武勇について天賦の才があり、ヴィーヤウトゥムノ伯の主家たる武門、ヘンドレイク公爵家のボレル公爵から直に手ほどきを受けることを許される程の成長を見せた。
やがて、彼は主観数百年に渡る自己研鑽の後、独自の武術流派「辺土SATSUGAI流」を創始。その武はヴィーヤウトゥムノの教練の一つとなり、同時に多元宇宙の多くでも諸派を生み出す源流となっている。
彼自身は万物を斬ることに執着する静かな、しかし確かに頭のおかしい冷笑的な偏執狂であり、たまにその辻斬りがちょっとしたトラブルの種になる事もあるが、概ねは上手くいっているようだ。

