ゴルフィンブールはアルダの西部、神代も大きく遠のいた時代にオークの貴族として戦死した。当時当地のオークとしては実際の所、ありきたりな生涯を終えた男であり、一氏族を率いる立場ではあったが、特別に優れていたわけでも劣っていたわけでもない。
しかし、その戦の相手が異種族──それもホビットとも、ハーフリングとも呼ばれる小人相手であり、全く不覚であったことは今もなお彼の心中に、悔恨を残している。
己が無様な討ち死にをした以上、己が率いていた氏族も恐らくは散り散りになってしまったであろうことも、今では無念に思う他はない。
さらに言えば、後に己の死後の屍の様子を神々に告げられたところによると、あの小人共は、刎ねた己の首を木に吊るして梟首にしたのみならず、丸っこいから、と蹴り転がすやら棒で叩き飛ばすやらの侮辱を繰り返したとも言う。
出来ることならば今すぐにでもその侮辱に報復してやりたいものだが、故郷アルダから時空を遠く離れてしまった以上、もう後の祭りだ。
そう、今の彼は───その魂と存在はアルダを遠く離れている。全く様々な紆余曲折を経たが、ヴィーヤウトゥムノに辿り着いて地獄の住人となったのだ。
のみならず、彼は恐ろしい程に偉大なはずのウトゥムノの神々──本来は小さき己など一瞥もしないはずであろう存在達に妙に気に入られてしまった。
今ではその側用人──というより格の差を思えばペットとして使われている。
明らかにヴィーヤウトゥムノの一般的労働者より待遇はよく、生前のアルダでは到底あり得ないお零れにあずかることも少なくないのだが、その代わり神々のトラブルに巻き込まれ、元は定命の者に過ぎなかった己の存在が、チリのように消し飛ぶこともまた、日常茶飯事だ。
その都度に即蘇生されてはいるが、慰謝料に見合っているかは彼にとって微妙なところだ。拒否権はないにしてももう少し優しく扱ってほしいとは思わないでもない。
そんななんだかんだで、彼の終わらない日々は続いているのであった。
