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SikabaneWorksが関係するコンテンツ(主に*band系ローグライク)の開発近況・補足から全く個人的な雑記まで。

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2010/12/17

[*band][ファンタジー]*band向けアンバーシリーズの個人的雑感1

ビオ略の人がアンバーシリーズについてもあれこれ説明してくれているので、今更自分如きが色々言及しても馬脚が出るだけかも知れないが、ダンプばかりで埋まるブログも微妙な気がするのであれこれ話をしながら勝手にキャラデザしてみる。とりあえず階層の深い順にアンバーの王族達についてあれこれ。

アンバーの王『オベロン』

 Zangband以降の*band系バリアントではサウロン先生に代わって99Fで@を待つアンバーの王様。サーペントが全ての源ならば、オベロンはそれが現在の宇宙という相を取る事で擬人化した存在とも言えるので、アンバーシリーズの世界観を交えながら雑感を述べたい。

 特にメガテンシリーズをやっていれば、メジャーでもマイナーでもなかろう妖精王の名で知られるオベロンであるが、北欧神話などから端を発するアルベリヒと同一視されている他、中世の英雄詩や文学作品を通じて、様々な諸相を持っている。詳しい訳ではないがその辺の重層さはかの『マーリン』に勝るとも劣らぬ所だろう。我々の生きる宇宙よりも平行宇宙論的に上位の存在が、我々の世界にふとした事で影響を及ぼしている──と言う世界観の中で、その頂点に立つ者の名として選んだゼラズニィのセンスはやはり卓越しているのではと評価したい。

 ネタバレない程度にアンバー作中のオベロンを語ると、まず出生そのものからして、息子や娘達にとっては全くの謎であり、それをコーウィンが(あるいはそれ以前にひょっとしたらエリック)がひょんな事から突き止めた事こそが、前半シリーズの真の敵役を捉える重要な流れの一つになっている。  思いっきり野心とエゴむき出しで協調性皆無の王子達の中すら、力づくでとって変わろうと言う気を失踪するまでは本来から起こさせない。前半シリーズで知られる限りの始原の頂点として、アンバーの根源たる〈パターン〉の秘密や技能に通じるので、後述のベネディクトが、仮に王位を欲してもそっちの方向で返り討ちにすることは容易いように思える。実際、前半シリーズ終盤で、かなりの要素がオベロンの手の平で踊る出来事であることが判明した。その得体の知れなさは王子達よりはるか前の世代からの、骨肉の争いを数千年続けてきた故のものと見て合点が行く。

 オベロンに限らず言えることであるが、アンバーの王族には、その設定においてイデア的な存在、一神教が思い抱くような絶対的な唯一性を一個の人格に求めるような要素も見える。しかしさらにその根源は〈パターン〉の紋様が生み出した理(あるいは「道」)であったり、また彼ら自身の動機が極めて俗っぽい点をみても、実際に描かれるエピソードはユーラシアの各種多神教を彷彿とさせる調子が多い。(それが我々の世界にも文字通り〈影〉を落としているという舞台装置である)

 そしてその中においてのオベロンとは言えば、そういう深淵な存在でありながら明らかに子煩悩としか思えない側面も見せており、大抵の親子関係と似たもので全てが己の思い通りには収められなかった。そのカタルシスは、アンバーの世界がスケールを途方もなく巨大にしている一方で、依然登場人物への感情移入を深く豊かにしている一因である。

 妖精伝承からエルフやドワーフ、ホビットを生み出し多神教的産物を並べる一方で、その世界の不文律は創造神イルーヴァタールの主題からは何一つ外れないという表層多神教、深層一神教のトールキンファンタジーとは好対照と言ってよいだろう。正直AngbandからZangbandが変異的に生まれたことには、モンスターや実装の列挙の違いとは言え、かなり深いものを感じる。

理想の戦士『ベネディクト』

長兄

 少なくとも前半シリーズで生存している限りの王子の中では長兄。武力に飛び抜けて秀でており、当人がその気になれば絶対的家父長であるオベロンからすらも力で王位をもぎ取れるはずだ(本当にそうかはさておき)とのコーウィン談。他の兄弟からも明らかに別格として見なされている描写は、随所に見られる。平行世界を自由に手繰れる王族の能力を利用して、戦略戦術や武芸を無数に研究してきた成果である。

 弟達の剣の師でもある。地球ヨーロッパの中近代の貴族を模した(設定的には逆に原型となっている)アンバーの王族が必ずしも実子に自ら教育を施す習慣があるとは限らないだろうが、しかしそれ以上に父親と言うよりは得体の知れない君臨者としての感が強いオベロンの代わりに、歳の離れた兄として、弟達を何人か養育していた期間があっても満更おかしくはない。  王位や、宮廷の序列よりはアンバーやその〈影〉の平行世界の秩序を維持することに注力している。コーウィンがいなくなった後衰えていたアヴァロンの地を代わりに統治し、王族達すら預かり知らない敵と戦っていた。  その後の経過から考えても、くしゃみすれば、それだけで無数の平行宇宙が生まれたり吹き飛んだりするような力を持つ弟達が、そこら中で引き起こしているトラブルの尻拭いをやってきた様子は、容易に想像できるだろう。

 しかし一方で前半シリーズの黒幕に、コーウィンと並んでそのアンバーの血筋を利用された立場でもあり、また策謀にはめられた一環で、コーウィンを殺しかねない勢いで追いかけ回した事もある。どいつもこいつも少なからず女たらし&ビッチの側面があるアンバーの一種の「血の呪い」から、この比較的良心的な長兄もまた逃れられなかったという調子である。