2011/06/14
■ [読書][ファンタジー]ユーラシアの創世神話―水の伝承
基本的にセックス&バイオレンスの凄まじさにうへうへうへへとなっている程度でしかない自分の神話に関する知識を、もう少し深めたいと一昨年位から激しく放置気味だったのを読み直した。
特にユーラシア大陸の各多神教、あるいは一神教でも比較的その名残が強い伝承(モーセの話など)の中でも、水そのものの効用やその権能を持つ神々が、それぞれどのような役割を果たしているかを中心に語りつつ、各神話総体の概略やキーワードもさらい直せる。
この本の中では、特に水は原初の「第一物質」として、最も根源的な存在としてあらゆる神話に語られていると説く。中でもメソポタミア神話で最も原初の神である、淡水の男神『アプスー』及び、海水の女神『ティアマト』から代が変わりやがてマルドゥク、エアに覇権が移り変わっていく、この流れが、あらゆる神話に形を変えながらも継承されたものなのだと見なしている。
この観点からすると、ギリシャ神話においても、最も原初の段階で重要な神は地母神ガイアだけでなく海神ポントスも等しく大きな位置を占める。のみならず一見権能が被っているように見える、オケアノス(川の神)やポセイドン(オリンポス世代の海神)、そしてネレウス(ポントスの息子)達も実際にはちゃんと学術的に考察できる水の多様性をそれぞれに表現しており、この神話に育ったギリシャ人達の水に関する多くの意識が見て取れるという。
まだまだ語り足りないが、ともかくその時点で密度の濃い、有意義な本だった。