2011/06/08
■ [*band][スケッチ]Atarverca, The Avatar of Void
この生まれつきの名を持たない虚弱な女マイアは数多くのアイヌアの中で唯一の白痴 であった。至福の民の住人は、彼女をメルコールの及ぼした不協和音に狂わされた犠牲 者と見なし、哀れんでいた。 しかし、メルコール自身はアイヌアの歌を改竄できるだけの見識と能力から、彼女が 元より必然的に生まれ得たイルーヴァタールの創世の業の欠陥そのものであり、その冒 涜的な具現であることを悟っていた。およそ叛逆者の立場として慈善と言うものに興味 のない彼が彼女を手厚く保護し、道化という形であれ手元においた理由はそこにあった。 彼女の存在そのものが父の恐れであり、彼の希望であったのだ。