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SikabaneWorksが関係するコンテンツ(主に*band系ローグライク)の開発近況・補足から全く個人的な雑記まで。

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2011/06/04

[ファンタジー][読書]ペガーナの神々

はいはい、今更ダンセイニを読み始めましたよ。

何か久しぶりの「もっと早めに読んで置くべきだった」な、ガチのFTマニアに「そら言わんこっちゃない」と言われてもくやしくはない程の感覚。なまじLoTR映画版から古典ファンタジーを意識し過ぎて、巷のトールキンへの過剰な評価に踊らされていた感において、所詮自分がニワカであることを認めざるを得ない。

後年への影響について、ラヴクラフトが自分が経験してきた生理的恐怖感や悪夢を作品として蒸留しきるには、この作品を経る必要があったという話が俄然納得いく。(個人的には悪い意味で根本的作風や思想を受け継いでいるようには思えないのだが)トールキンもこれあってと言われるだけのことはある。

どこまでも、人間だろうと神々だろうと、繁栄だろうと滅亡だろうと、あらゆる作中の存在を茫洋と突き放して描く。単純な能力や権能によって身分差やそれ以上のものは存在するし、それによって引き起こされる理不尽や悲劇も存在する。しかし、どんなものも結局等価な出来事に過ぎない。このペガーナは、開闢のしょっぱなから眠り出す事で世界を創造した、神・マアナ=ユウド=スウシャイのまどろんでいる夢に過ぎないからである。

こんなメタな点で作り話に過ぎないという形を持つ事で、既存神話や歴史にはいくら純度を上げようとも(上げる努力は常に必要な訳だが)どうしても絡んでくるイデオロギー的偏りから、架空の世界であるが故に限りなく開放される。これが幻想の原点にして第一義なのだろう。

つまるところ以降のハイ・ファンタジーはこの茫洋たる所に作家独自の揺らぎを敢えて突っ込む所で成り立つのではないかと、ちょっと過剰評価しすぎであっても、断言したくなってくる。

直接の影響者としてラヴクラフトは、ペガーナという原形質に異形の恐怖という味付けを持ち込むことでコズミック・ホラーを生み出した。WEBで見つけたクトゥルフTRPGの設定集で、アザトートの別名、あるいは側面がマアナ=ユウド=スウシャイと呼ばれているみたいな話が持ち込まれていたが、茫洋性の差についても、メタな作家の前後関係的にも、むしろクロスオーバー的には逆と見なすべきではなかろうか。

ゼラズニィの〈多元宇宙〉や、ムアコックの〈百万世界〉も、この茫洋性に作家性としてハードボイルドやヒロイックと言う偏りを添加する事でスケールの大きさを示しているように思える。パターンやら混沌やらと我々アマチュアが下手に取り扱うとただの邪気眼になる設定も、どこかコーウィンやエルリックに愛着を持ちながらも、同時に突き放したものを持ってれば臭みがむしろ味になる訳である。