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SikabaneWorksが関係するコンテンツ(主に*band系ローグライク)の開発近況・補足から全く個人的な雑記まで。

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2009/07/30

[歴史]学術が際どいところで進歩する例

  • ※2009/12/10誤字修正
  • ※2012/11/14文章修正

お題はフーリエとナポレオンのエジプト遠征。大学の数学の復習をするやら、長谷川先生のナポレオン〜獅子の時代〜を読んで、それに関連する資料も読み直しながらやらで、気づいた話であります。

大学の理系学部を通るには避けて通れぬフーリエ解析。その原点を著書『熱の解析的理論』の中、数学的要請から編み出したジョゼフ・フーリエ氏は、激動のフランス革命期を生き抜いた人でした。この人は当時の混乱もあって士官学校や修道院を転々とし、政治的弾圧の被害者になったこともありましたが、結果的には才能を認められ、高等師範学校を通ったエリートとして、ナポレオンのエジプト遠征に加わりました。

ナポレオンのエジプト遠征、これが非常にきわどい彼の大博打の一つであったことは知る人ぞ知る話。海路ではあのネルソンに付け狙われ、陸戦では泥沼の戦いを繰り広げて計画の大半は頓挫。フランス本国に内乱の兆しがあったからこそ、彼はこれらのズタボロの戦いを無かったことにして、晴れて英雄として帰還できました。

この状況下で随行した学者達はロゼッタ・ストーンの発見を主として、様々な成果を上げて生還を果たしましたが、とにかくも彼等の学者魂には脱帽する他ありません。下手をすると、地中海航路の時点でネルソンに軒並み海の底へ沈められた可能性もあるのだから、ナポレオン共々強運であったとも言えます。

そんな学者団の一人として生還できたジョゼフ・フーリエは、数年後に政治家としても手腕を発揮しながらフーリエ解析(当時はまだ不完全だった訳ですが)を熱解析のついでに確立したのでした。おそらく当時はこれが今後、どれほどの学術的発展を果たすのか当人も気づかぬままだったでしょう。

さて、この時フーリエがネルソンの砲撃に船を吹っ飛ばされ、海の底に沈んでいたら、フーリエ解析に一定の基盤を置いた学術や技術はどうなっていたのか。ある一人の人物が発見するはずだった理論がその人の死によって無効になった時、それの埋め合わせを他の学者が多かれ少なかれするものだとも言われています。

しかし実のところ、当時のフランスの学術レベルはブルボン王朝が巨費を投じて設立したアカデミーのおかげで他国より頭一つ抜けていました。フーリエに限らず、それら珠玉の集まりだった学者達が海の藻屑と化していたら、果たして他国で埋め合わせがついていたでしょうか?

正直ぞっとする話だな、と思う訳です。